Inclusive Education 2.0は、幼児期(主に3〜6歳)における発達の遅れを持つ子どもたちを対象とした、実践的な支援モデルです。 政府・教育現場・保護者・専門機関が連携し、限られた人材・予算でも子どもたちの可能性を最大限に引き出せるよう、早期発見・支援・移行までを一貫して支える「幼児発達支援に特化したインクルーシブ教育の仕組み」として構築されています。
教育×テクノロジーで、発達支援の格差をなくす。マレーシア・サラワク州から始まった、TOY8の実践モデルをご紹介します。
6歳までの発達支援は、その後の人生を左右する。脳神経の90%、身体の40%が6歳までに発達。
しかし東南アジアのほぼすべての国では幼児の発達を評価する公的制度が整っていません。
88%の親が子どもの成長について心配している。
マレーシアでは、小学校1年生の27%にあたる12万人以上の子どもが読み書き数えを習得できておらず、早期介入プログラムへの参加が必要とされています。
出典:2~5歳児を持つ保護者を対象とした発達スクリーニングと関心に関する調査(トイエイト) / マレーシア / 2021, N=450
この課題を解決するためマレーシアでは「Zero Rejection Policy(ゼロ・リジェクション・ポリシー)」を導入。すべての子どもが教育の機会にアクセスできる制度が存在します。
しかし実際には、専門人材の不足と教育現場の受け入れ態勢の未整備が重なり、インクルージョンの実現が進みにくい状況が多くの地域で続いています。
この課題はマレーシアだけではなく、十分なインクルーシブ教育を提供するためには、多くの専門家やそれを維持するための費用など、低所得や低所得国で解決をする事は難しい
先生をテクノロジーでエンパワーメント。人材不足を街全体のエコシステムで解決する。
前述のマレーシアによる「Zero Reject Policy(ゼロ・リジェクション・ポリシー)」に基づき、サラワク州女性・幼児・コミュニティ福祉開発省は幼児教育における「Open Door Policy(オープン・ドア・ポリシー)」を掲げ、発達の遅れがある子どもたちの受け入れを積極的に推進してきました。
ファティマ・ティン・ビンティ・アブドラ
サラワク州女性・幼児・コミュニティ福祉開発大臣
現場では以下のような課題が顕在化していました
幼稚園:教員のスキル不足
支援センター:専門家不足
結果として州内首都であるKuchingの主要な発達支援センターである OSEIC(One-Stop Early Intervention Centre)が発達の遅れのある幼児のボトルネックとなり422人(2024年時)の子どもが長期間待機。
その対応として、州は民間および専門機関との連携を強化し、インクルーシブ教育2.0モデルの試行を開始しました。戦略は、3つの中核的な要素を軸に構築されました。
1. 幼稚園と支援機関の連携強化
OSEIC が子どもを選定・評価し、AKO(幼稚園協会) が受け入れ先の調整を担当。
TOY8 はAIスクリーニング&療育ツールと教員トレーニングを提供。
NECIC(全国早期介入評議会) の専門家が、週次の遠隔レビューで現場を支援。 このような官民連携・多機関連携の仕組みが構築されました。
2. テクノロジーを活用した現場エンパワメント
幼稚園教員は、TOY8のAIスクリーニングツールと個別支援プログラムの活用を通じて、自らの手で子どもの発達支援を実施できる自信とスキルを獲得。
3. データ駆動の政策とモニタリング
スクリーニングデータや介入進捗を可視化・報告。
このデータは、サラワク州政府による予算配分や制度改善の根拠資料としても活用。
幼稚園教員53名にトレーニングを実施。
デジタル発達健診、介入、インクルーシブ教育など幼稚園側の受け入れ・支援体制を整備。
OSEICの生徒や待機児童210名の発達健診を実施。幼稚園への転籍が可能な児童を特定。
支援センターと幼稚園の連携強化をすることで待機児童の大幅削減を実現
2024年に424人だったOSEICの待機リストは、2025年に290人に削減。2026年初旬に待機児童ゼロとなることが予測されている。
実現すればマレーシアで初めてゼロリジェクションポリシーが実現した町となる。
先生の声
「子どもの変化が、自分の自信になった」
「もっと多くの園で使ってほしい」
同政府はこの成功を受けて、戦略プロジェクトとしてプロジェクトを州全体に拡大
サラはダウン症を持って生まれました。
母親はまだ21歳。シングルマザーとして、昼はサラの世話、夜はパート勤務という生活を懸命に送っています。
サラと母親の人生の分岐点の始まりは3歳になった頃、ダウン症による発達の遅れを理由に、近所の幼稚園すべての入園を断られることから始まります。
インクルーシブ教育がある未来
地域の支援センターでは順番待ちもなく、すぐ受け入れられ、支援がスタート。
インクルーシブ教育がない未来
支援センターは1年待ち、母親は不安と孤立感を抱え待つこと以外できない。
サポートのある未来
サラは専門スタッフとAIツールで療育を受ける
サポートのない未来
母は日中ワンオペ育児、夜にパート勤務で疲弊
サポートのある未来
サラの発達改善がみられたたため、支援センターの推薦で幼稚園入園、デジタルツールを活用したインクルーシブ保育が始まる。
サポートのない未来
一年待ちを経てようやく地域の支援センターに入ることができる。並行して幼稚園の入園を何度か試みるがダウン症と発達の遅れを理由に断られ入園ができない。
「6歳、社会とつながる/孤立する分かれ道」
サポートのある未来
小学校入学。友達と同じ教室で学び、自信を持つ。母親も正社員として職を得る
サポートのない未来
小学校進学は叶わず、特別支援の枠へ。母も仕事が安定せず、将来への不安が続く
“支援がある”ことで子どもの可能性の富を最大化できる。Inclusive Education 2.0は、子どもと家族の選択肢を広げる実践モデルです。
Inclusive Education 2.0は、すでにマレーシア・サラワク州で効果が実証され、今ではASEAN全体への政策提言にも広がっています。もしこのモデルを、あなたの地域・教育現場に導入したい場合、以下のツールをご活用いただけます。
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準備
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試行
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改善
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拡大
上記テンプレートは、導入パートナー向けにカスタマイズ可能なフォーマットでご提供しています。詳細はお問い合わせください。